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自分のために、誰かのために…… 料理をすることは悩める人生への処方箋 - 朝日新聞デジタル

『生き抜くためのごはんの作り方』

今回紹介する『生き抜くためのごはんの作り方 悩みに効く16人のレシピ』は、河出書房新社から出ている「14歳の世渡り術」というシリーズの1冊です。「未来が見えない今だから、『考える力』を鍛えたい。行く手をてらす書き下ろしシリーズ」で中学生以上、大人までと本書の最後のページに記されているのですが、この本は中学生だけに読まれるのはもったいない、普段は料理をしないけれど興味を持っている人、毎日献立を考えるのを苦痛に感じる人などに広く読んでほしい1冊でした。

内容はタイトルの通り、食に携わるプロたちがあらゆるシチュエーションの悩みについて、エッセーとレシピを考えています。まず、その16人の執筆陣が豪華です。料理にあまり興味がない人でも一度は目にしたことがある人がいるのではないでしょうか。SNSでの投稿が楽しい料理研究家からテレビやレシピ本で活躍するプロまでバラエティーに富んだ人選です。ある人はユーモアたっぷりに、ある人は自分が14歳だったころどうだったかを振り返りながら語り掛けてくれます。

自分のために、誰かのために…… 料理をすることは悩める人生への処方箋
『生き抜くためのごはんの作り方 : 悩みに効く16人のレシピ (14歳の世渡り術)』河出書房新社(編) 河出書房新社 1,562円(税込み)

例えば、料理家・文筆家の高山なおみさんは、かつて自身が子供のころ、吃音(きつおん)で悩み、教科書をみんなの前で読む本読みの日が憂鬱(ゆううつ)でずる休みをしていたことを告白。そんな不安をどのように乗り越えたかや、不安なときに体の芯からあたたまる「しょうが入りあんかけうどん」のレシピを紹介。現在、同じような悩みを抱える人たちへ優しく寄り添ってくれます。

料理研究家のきじまりゅうたさんのお題は「集中できないときのためのレシピ」。普段料理をしない人にも伝わるように、段取り力が鍛えられる超かんたんレシピとしてあげるのが「深夜に食べる卵入りカップラーメン」です。「え? カップラーメン」って思いました? 作り方はこのように始まります。

まずはこの「作り方」を最後まで読みこむ。レシピを読みながら作業を進めるのは効率的とは言えない。

p.90

思わず声に出して笑ってしまいましたが、きじまさんはいたって真剣です。8項目に分かれる作り方を読むと、あらゆる可能性を考慮し、適切な量の材料を適切なタイミングに入れ、作っている一方で盛り付ける器の準備をし、後片付けをするという多くの作業を効率よくやるには、「一度スタートしてしまうと、時を止めることはできない」料理において「段取り力」はとても大切な力で、これを養うことができれば、勉強や仕事において活(い)かせるというのも納得です。

そして、枝元なほみさんの文章は、自分で考えて料理ができることの良さ、「食べること=生きること」の意味を彼女のやわらかい言葉で綴(つづ)っています。失敗してもいいんだよ、正解なんてないんだよ、とエールを送られた気持ちになります。

16人それぞれのエッセーとレシピは料理に悩む人々への処方箋(せん)であるとともに、料理を通じて養うことのできる生き抜く力、誰かにつくることの素晴らしさ、うまくできたときの成功体験があることをやさしく教えてくれる1冊です。

自分のために、誰かのために…… 料理をすることは悩める人生への処方箋
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PROFILE

嵯峨山瑛

さがやま・あきら
二子玉川 蔦屋家電 建築・インテリアコンシェルジュ
大学建築学科卒業後、大学院修了。専門は都市計画・まちづくり。 大学院在学中にベルギー・ドイツに留学し建築設計を学ぶ。 卒業後は、出版社やリノベーション事務所にて、編集・不動産・建築などの多岐の業務に関わる。

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