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電車旅気分でまあ一杯…鉄道居酒屋「せとうち」の家庭料理(東京・千駄木) - 産経ニュース

初代新幹線グリーン車のシートをいすに、壁には列車の行き先表示板…。店内は鉄道の世界が広がる異空間のよう=東京・千駄木(いずれも酒巻俊介撮影)

下町情緒の漂う東京・千駄木に、鉄道愛好家の〝聖地〟として知られる居酒屋がある。1日1組限定。国鉄時代の駅名標や列車のヘッドマークなどが並ぶ鉄道コレクションもさることながら、丹精込めた料理も絶品だ。(大竹直樹)

「麻績行」「湊町行」「松波行」…。店内の壁は「サボ」と呼ばれる列車の行き先表示板で埋め尽くされている。ほうろう製の貴重なものだ。ちなみに麻績(おみ)駅は昭和51年に聖(ひじり)高原駅に、湊町駅は平成6年にJR難波駅へとそれぞれ改称され、松波駅は17年に廃駅となって現存していない。

店へと上がる階段も趣深い(酒巻俊介撮影)

白眉(はくび)は初代新幹線0系の部品。重機で運び入れたというグリーン車の外壁はもはや鉄道遺産。トイレのドアも初代新幹線で使われていたものを流用した。

千駄木の鉄道居酒屋「せとうち」。2代目店主の服部正代さん(76)は「私は鉄道に詳しくないが常連のお客さんはみんな博識。お話を聞くのがとても楽しい」と目を細める。

店名は初代店主、瀬戸内健三さんの名に由来する。日本中が高度経済成長に沸き、世界初の高速鉄道、東海道新幹線が産声を上げた昭和39年に開店した。

サーモンのトマト照り焼きや炊き合わせ。和食9品のコース。大正時代の路線図の上で供される(酒巻俊介撮影)

瀬戸内さんは平成11年、76歳で他界したが、店の存続を望む声は強かった。当時店を手伝っていた服部さんが遺族の了解を得て、2代目を引き受けた。「マスター(瀬戸内さん)が健在のときに鉄道や料理のことをもっと教えてもらいたかった」と話す。

供されるのは9品のコース料理1種のみ。1人4400円で、2人から利用できる。つまり酒類の提供がなければ1日の売り上げが1万円に満たないことも。十数年前から2代目をサポートする野本佳子(さいこ)さん(81)は「お酒代も実費。利益を考えたらやっていけない」と打ち明ける。

鉄道居酒屋「せとうち」の入り口。期待がふくらむ(酒巻俊介撮影)

グランドピアノの屋根(天板)を利用したテーブル。年季の入ったいすは、0系新幹線のグリーン車で使われていたリクライニングシートだ。ランチョンマット代わりの紙は大正13年当時の路線図。料理を待つ間も飽きさせない。

シラスを散らしたサラダと精進の炊き合わせが運ばれてきた。「料理の修業をしたわけではないので、こんな家庭料理しかお出しできない」と服部さん。だが夏野菜はどれも滋味豊かで味わい深い。

素材によって、だしや調味料の配合を変え、それぞれ炊き分けているという。続く豚の角煮もホロホロとした絶品。「寄る年波には勝てないから、1日1組がやっとだが、だしにはこだわっている」と野本さん。

鉄道居酒屋「せとうち」の2代目店主の服部正代さん(左)と、野本佳子さん

この日のメイン料理は腕によりをかけた「サーモンのトマト照り焼き」。さっぱりとした酸味が特徴。大葉と大根おろしの涼味が、暑気を払ってくれる。

「食べるのが好きだから、いろんなレシピを研究して季節の食材をコース料理に取り入れる」と服部さん。野本さんは「お客さんに『おいしい』と言われるのがうれしい。体の続く限り店を開けたい」と話す。

1日に1組しか味わえない鉄道居酒屋。店先にはいつも「本日 貸し切り」の立て札がかかっている。

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