放送中のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」。沖縄本島北部のやんばる地方で生まれた4人きょうだいを描いた作品だ。黒島結菜(25)演じる主人公は食べることが大好き。料理人を目指し、ドラマにはさまざまな沖縄料理が登場します。ということで、琉球時代から伝わる沖縄の郷土料理の歴史や文化、使われる食材などについて、管理栄養士で沖縄料理研究家の宮澤かおる氏に聞いてみました。また、家庭で楽しめる沖縄ごはんのレシピも紹介します。【竹村章】
◇ ◇ ◇
沖縄は1429年(永享元)から1879年(明12)まで450年あまり、琉球王国と呼ばれる独立国だった。
沖縄県庁の資料などによると、沖縄の伝統的な食文化とは、琉球料理という独自の料理文化に基盤を置き、食材や調理法、風俗習慣などのさまざまな要素を包含した生活文化、としている。この琉球料理が独自のものになったのは、自然や気候風土の尊重、家族、親族や地域とのつながりを大切にする精神などのほか、日中両国をはじめ各国との交流による影響が大きいという。
琉球王国は1374年から中国(当時は明)との貿易を開始。14世紀はこの地域では海賊が略奪を繰り返していたことから、明は自由貿易を禁止し冊封制度を取り入れた。この制度は、貢ぎ物を納める国には地位を承認し決められた港で貿易を行う仕組み。琉球と明は冊封関係となり、明からは冊封使と呼ばれる師団が儀式を行うために訪れた。
-琉球王国が冊封使をもてなしたのですか
宮澤氏 冊封使は総勢400人ほどが半年ほど滞在したと言われ、定期的に宴会を開き、もてなしました。儀式は王が替わるたびに、計23回も行われたという記録があります。冊封使の口にあう料理を提供するため、琉球の料理人が明に渡り、中国料理などを習得したとされます。
-日本との交易は
宮澤氏 薩摩とも貿易を行い、薩摩の在藩奉行らをもてなす料理も生まれました。コンブなどは沖縄で手に入らない食材でしたが、薩摩から伝わりました。
-琉球料理の特徴とは
宮澤氏 大まかに3つの特色があります。豚肉料理、うま味を生かした料理、クスイムン(医食同源)料理です。
-ラフテーやソーキそばなど豚肉は多いです
宮澤氏 中国は豚肉料理が多いですよね。牛は農業を助け、馬は武士が乗っていたこともあるのでしょう。冊封使をもてなすために豚肉料理が増えました。庶民の家庭では豚肉はごちそうで、正月やハレの日に食すものでした。鳴き声以外はすべて食べると言われており、部位別のいろんな料理があります。
-血も食べるのですか
宮澤氏 血イリチーという、食材を血で炒める料理です。新鮮な血でないとダメで、私も提供するお店は沖縄では1軒しか知りません。
-モツ煮などは関東にも
宮澤氏 関東のみそ味とは違い、中身汁はすまし汁です。何回も下処理を繰り返さないと、臭みが取れないので丁寧な調理法も特徴です。
-だしのうま味は日本料理の特徴でもあります
宮澤氏 琉球料理はだしの組み合わせに特徴があります。だしには、かつお節、豚肉、昆布、干し椎茸(しいたけ)などがありますが、うまみ成分を組み合わせることでうま味を増やしています。沖縄そばも、昆布だしと豚肉だしの組み合わせが多いです。
-医食同源になったのは
宮澤氏 琉球王のために書かれた現代の栄養学のような書物「御膳本草」があり、明の医食同源の考えをもとに書かれました。それ以来、沖縄にはヌチグスイ(食べ物が命になる)料理やクスイムン(薬になる)料理が食べられるように。安室奈美恵さんも「ヌチグスイやっさー」と言ってました。食べたら元気になるということで、その人にとってもヌチグスイのポイントは違います。
-クスイムン料理にはどんなものが
宮澤氏 疲労回復になるチムシンジ(豚レバーと島ニンジンの煎じ汁)とか、滋養強壮のためのイラブーシンジ(エラブウミヘビを煎じた汁)などがあります。チムシンジは体調が悪い時に食されていました。ただ、塩気がなくバツゲームに食べさせられるような味で。今は現代ふうの味になっています。
-沖縄の野菜など食材も独特です
宮澤氏 しまらっきょはエシャロットに、島ニンジンはごぼうに近いです。ハレの日に欠かせない田芋(タイモ)は、水芋と呼ばれ、食感はサトイモに近いです。カリウムが多く含まれ、だし汁で練り上げた伝統料理のドゥルワカシーなどがあります。
-チャンプルーは豆腐と炒める料理です
宮澤氏 ゴーヤーチャンプルーやお麩(ふ)と炒めるフーチャンプルー、しまらっきょチャンプルーなどですね。ジーマーミ豆腐は落花生から作られたもの。沖縄ではふわふわした食感のできたてのゆし豆腐が売られています。スーパーでも出来たてが販売され、パンの焼き上がり時間のように時間も指定されているんです。地域によって味も違うので、味めぐりをしています。スーパーでもいろんな豆腐が売られていて、出来たてはさらにおいしいです。【聞き手=竹村章】
◆宮澤(みやざわ)かおる 管理栄養士で沖縄料理研究家。総合病院では栄養指導や治療食を担当、栄養指導やカウンセリングを行う。その後、テレビや雑誌の料理撮影アシスタントを経て、那覇市内の古書店で琉球王国の王様に書かれた栄養学の「御膳本草」と出会い、琉球王国時代の食文化を伝える活動や、沖縄食材を広める活動を行っている。キャッチフレーズは関東初の沖縄料理研究家。沖縄・北中城村の発酵ライフスタイルリゾートホテルの発酵栄養アドバイザーや、食のレシピサイト、食ZENラボでレシピ掲載やオンライン料理教室を開催。同ラボのオンライン料理教室「Meal Meets Online」では、さまざまな料理教室動画をいつでも視聴可能。
◆竹村章(たけむら・あきら) 1987年(昭62)入社。販売局、編集局地方部などを経て文化社会部。芸能全般のほか、メディア関連の担当が長い。
<家庭で楽しめる沖縄ごはんのレシピ>
★豚肉料理
【中味汁=なかみじる】
豚モツのすまし汁。関東などでは、赤みそで煮込んだもつ煮込みが定番料理ですが、沖縄では、豚のモツを丁寧に下ごしらえし、かつおベースのスープ、お好みでおろしショウガや沖縄のコショウ、ヒハツをトッピングしていただく上品なスープ。沖縄では、ハレの日やお正月の定番料理です。
◆材料(2人分)ゆで豚モツ80グラム、椎茸2枚、A(かつおだし2カップ)、B(塩小さじ2分の1、しょうゆ大さじ1)、お好みでショウガすりおろし小さじ1
◆作り方 <1>熱湯に湯を沸かし、豚モツをゆで、臭みを取り除く<2>豚モツを約3センチ長さの細切りにする<3>椎茸は薄切りにする<4>鍋にAと材料を入れ強火で加熱、沸騰したらBを加え弱火で約10分加熱する<5>器に盛り、お好みでショウガをトッピングして出来上がり。
◆ポイント 生モツではなく、ゆでモツを使用すると便利です。<1>の工程で臭いが気になる方は下ゆでを2~3回繰りかえしましょう。
【ピリ辛!?ミミガーの和(あ)え物】
ミミガーとは豚の耳のこと。コリコリ感があって、クラゲのようなクセになる食感。ピーナツ和えが一般的ですが、今回は、さっぱり味。お酒のおつまみにもあいます。
◆材料 ミミガー50グラム、キュウリ1本、塩少々、A(しょうゆ大さじ1、砂糖小さじ2分の1、穀物酢大さじ1、ごま油小さじ2分の1、白いりゴマ小さじ1、ラー油小さじ1)
◆作り方 <1>ボールにAを加え混ぜ合わせる<2>小鍋に熱湯を沸かし、ミミガーを下ゆでし、水気を切ったら熱いまま加え味をなじませる<3>キュウリは約3センチ長さの千切りにし、塩を少々ふり約10分おき、水気をきり加え混ぜ合わせる。<4>冷蔵庫で約15分置き、器に盛り付け出来上がり。
◆ポイント 味付きミミガーを使用する場合は、調味料を減らして調整してください。作り置きも可能で、3~4日が目安。
★栄養素を組み合わせた料理
【沖縄伝統料理 イカ墨汁】
濃厚で一度食べたらクセになる味わい。別名はイカ墨のお汁、イカの墨汁などと呼ばれてます。クスイムン料理の1つで、当時は「頭痛やのぼせ、産後の回復などによい」とされてきました。主な栄養素は、良質タンパク質の豚肉やイカ、糖質の代謝を助けるビタミンB1などが含まれています。本来は、沖縄島野菜のニガナを使用しますが、沖縄県外でも手に入る大葉で代用したレシピです。
◆材料(2人分) イカ200グラム、豚コマ肉100グラム、塩少々、大葉10枚、A(カツオだし2カップ、にんにくすりおろし小さじ1)B(塩小さじ2分の1、イカ墨大さじ1)
◆作り方 <1>イカは内臓や甲、薄皮を取り除き、短冊切り、ゲソは3センチ長さに切る<2>豚肉は1口大に切り、塩で下味をつける<3>大葉は茎を取り除き、半分はざく切り、残りは細切り(トッピング用)にする<4>鍋にイカ、豚肉、大葉を入れAを加え強火で加熱し、沸騰したらアクを取り除き弱火にして約5分煮込む<5>さらにBを加え、全体を混ぜ合わせ火を止め、器に盛り、大葉をトッピングして出来上がり。
◆ポイント にんにくは、チューブのすりおろしでも代用可。イカ墨ペーストは、沖縄物産展などでも購入できます。
★うま味を生かした料理
【沖縄炊き込みご飯】
沖縄のうま味を味わう炊き込みご飯です。豚肉・干し椎茸・かつおだしのうま味の相乗作用で味わい深い上品な味わい。本来は、ばら肉の塊を使用しますが、脂質が少ないコマ肉で代用した簡単版レシピを紹介します。
◆材料(3合) 豚コマ肉100グラム、A(泡盛大さじ2、塩少々)、干し椎茸3枚、B(砂糖大さじ1)、ニンジン1本、細ネギ(輪切り)3本、C(干し椎茸の戻し汁1カップ、かつおだし2カップ、しょうゆ大さじ3、塩小さじ1、泡盛大さじ2、ごま油大さじ1)、水適量、米3合
◆作り方 <1>耐熱容器に水1カップ、干し椎茸、Bを加え、軽くラップをして電子レンジ600ワットで約2分加熱。ラップをしたまま約5分、柔らかくなるまで置く。椎茸は石づきを取り除き5ミリ角に切り戻し汁は取っておく。<2>豚肉は、耐熱容器に入れ、Aで下味をつけ、軽くラップをかけ600ワットで1分30秒加熱し、粗熱が取れたら5ミリ角に切る。<3>ニンジンは皮をむき、5ミリ角に切る<4>米は洗って水気を切り、炊飯器に入れ、全部加え、炊飯器の普通炊きで炊く<5>炊き上がったら、器に盛り、ネギをトッピングして出来上がり。
◆ポイント 今回は体に優しいヘルシー版ですが、濃厚なお味が好きな方は、ごま油をラードに変えてもOK。時間がある方は、干し椎茸は、容器に椎茸と水を入れ、冷蔵庫で約30分水戻ししましょう。
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