パリ支局 梁田真樹子 長円形の皿に茶色っぽいメインの具材がドンと陣取り、周りをオレンジ色のソースが囲んでいる。ボリューム満点に見えるが、はんぺんのようなふわふわした食感にエビのだしを利かせた濃厚ソースがマッチし、やみつきになった。
■エビを丸ごと4時間煮込むソース
フランス南東部リヨンの伝統料理「クネル」は、カワカマスのすり身に小麦粉や卵、バターなどをまぜてこねた練り物だ。リヨン中心部で150年以上の歴史を持つレストラン「カフェ・フェデラシオン」では、2分ほどゆでて膨らませたクネルにソースをかけ、オーブンにかけて提供している。
ソースは、エビを丸ごと4時間煮込むのが特徴だ。白ワインや生クリーム、トマトソースなどを加えて濃厚に仕上げる。クネルだけを口に含めば素朴な味わいが楽しめ、ソースと絡めれば豊かな風味が口いっぱいに広がる。グラタンのように気軽に食べられ、ランチに訪れる地元客も多い。
■「美食の街」に根づく庶民の味
経営者のエマニュエル・ボドワンさん(57)は「クネルはリヨンの『ブション』を代表する料理」と説明する。ブションはリヨンで庶民料理を出すレストランを意味する。ボドワンさんによると、元々馬で旅する商人らが利用する食事付きの宿を指していた。
リヨンは交通の要衝として栄え、19世紀頃には各地の食材が集まる「美食の街」として知られるようになった。ブションでは、上流階級が使わない食材を利用し、味付けやソースを工夫して安く提供するもてなしが評判だったという。クネルも地元産のカワカマスを使い、満腹感を得られる料理として定着した。
ボドワンさんは「ブションが『地元の自慢』というリヨン市民の安心感を作ってきた。自分も伝統を受け継ぎたい」と胸を張った。
■前菜を分け合うのがリヨン流
前菜で定番のリヨン名物もある。ベーコンと葉物野菜にポーチドエッグを載せた「リヨン風サラダ」と、パン生地に太いソーセージを詰め、食べ応えがある「ソシソン・ブリオッシェ」だ。どちらも庶民の手が届きやすい豚肉を使っている。いくつかの前菜を分け合うのがリヨン流だという。
■食文化育てた「リヨンの母」
ブションと並んでリヨンの食文化を語る際に欠かせないのが、「リヨンの母」と呼ばれる女性料理人だ。
元々上流家庭の料理人として働いていた女性らは、上流階級の特権が廃止されるにつれて19世紀末~20世紀前半に多くが職を失い、培った料理の腕を生かして自分の店を構えるようになった。豊かな食材を生かした料理が大衆に広がり、続く料理人たちを生み出す土壌となった。
リヨン出身で、フランス料理の伝統を打ち破る「ヌーベル・キュイジーヌ(新料理)」の旗手と称された巨匠ポール・ボキューズさんも、こうした「リヨンの母」から料理を学んだ一人だ。
リヨンの新市街には、2018年に91歳で死去したボキューズさんの名を冠した市場がある。ボキューズさんが教えを請うた女性料理人ウジェニー・ブラジエさんと並んで納まった写真をはじめ、「リヨンの母」に関する資料が展示されている。リヨン土産を選びながら、「美食の街」を育んだ歴史を学べる場所として人気だ。
◇ 国内外の総支局長が、地域の自慢の味を紹介します。
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