冬の「鍋料理」の定番に、「おでん」を連想する人は多いのではないだろうか。実際、大手食品メーカー、紀文食品(東京)によると、家庭で作って食べた鍋料理ランキングで25年連続1位だという。いわば冬の「国民食」だが、発祥は室町時代と古く、以来、庶民の胃袋を温めてきたようだ。
「おでんやの 湯気吹き飛ばす 空ッ風」
これは明治から昭和にかけて近代俳句の発展に多大な功績を残した高浜虚子の句だ。
平明で余韻がある作品を身上とした高浜の句には、冬の季語「おでん」を取り入れたものが多い。おでん屋から立ち上る湯気の温かさや、庶民の暮らしの情景が浮かぶ。
紀文食品は平成6年から「家庭の鍋料理調査」を実施。前年度の秋冬に食べた鍋料理を毎年、複数回答で聞いてきたが、すき焼きやキムチ鍋などを抑え、おでんは11年から25年連続でずっと1位だという。
同社の担当者によると、家庭で作られるようになったのは昭和40年代頃から。「経済の発展とともに働き方や食生活が徐々に変わっていく中で、外食していたおでんが家庭で作る鍋料理の対象にもなってきた」という。
「さつま揚げや、ちくわなどの練り物はちょっと温めればすぐに食べられるという手軽さもあり、一気に家族全員分を作れる比較的簡便なメニューとして認知され、それが広まっていったのではないでしょうか」と解説する。
ルーツは「おでんがく」
今では身近な家庭料理だが、おでんが現在の形になるまでには変遷がある。ルーツは室町時代に流行した「豆腐田楽」だという。
同社などによると、おでんの「でん」は「田楽」の「田」なのだとか。室町初期、宮中などに仕える女官が田楽に「お」をつけて「おでんがく」と呼んだものが短く「おでん」という言い方に変わった。
今も当時も、田楽といえば、切った豆腐などを串に刺して焼き、みそをつけたもの。一方、「おでん」が今のように熱いだしに浸す形になったのは、明治時代だという説がある。東京大学近くにあった専門店「吞喜」が発祥とされる。
それが大正期に関西に波及。関東大震災の発災後、関西から被災地支援で入った料理人たちが、現在の若干薄味で透明感のあるだしを使った関西風味のおでんをふるまった、という話も伝わる。
地方色豊か
黒いだしが特徴の「静岡おでん」。すりおろしたしょうが入りのみそだれでいただく青森県の「しょうがみそおでん」。車麩(ふ)やバイ貝が入った石川県の「金沢おでん」など。おでんには地方それぞれの味わいがある。
『枝元なほみの今夜はおでん』(技術評論社)の著書がある料理研究家、枝元なほみさん(68)は「自分ちのここがポイントとか、その土地で育って食べてきた思い出とか。地域のものを使い、暮らしの思い出とともにあるのがおでんだと思う」と話す。
いつもの夕飯でも、仲間が集まるイベントの日にもみんなで鍋を囲めるというのが、「おでんならでは」ともいう。
おでんは「具材の下準備が大変だけど、準備できたらあとは煮込むだけという気楽さがある」と枝元さん。「おでんを食べるタイミングっていつでも!って感じがしませんか。鍋底で大根をじっくり煮込んでもおいしいし、翌日食べてもおいしい。そういう立ち位置の料理って、そんなに多くないんじゃないかと思う。おでんが嫌い、という人を私はあまり知らない」と熱々の〝おでん愛〟を語った。
(松本恵司)
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定番おでんの作り方
材料(4人分)
はんぺん(大判)1パック/焼きちくわ1パック/揚げボール1パック/魚河岸あげ2個/つみれ1パック/ちくわぶ1パック/結び昆布4本/こんにゃく1枚/大根300グラム(3分の1本)/ゆで卵4個/汁(つゆ)3リットル
❶はんぺんは8等分の三角形に切り、焼きちくわ、ちくわぶはそれぞれ長さを2等分し、さらに斜め2等分に切る。
❷こんにゃくは両面に細かく包丁で切り込みを入れ、食べやすい大きさに切り、さっとゆでておく。
❸大根は厚さ2センチに切り、片面に十文字の切り込みを入れ、下ゆでする。
❹鍋に汁を煮立て、ちくわぶ、大根、こんにゃく、ゆで卵を加え弱火で約30分煮る。
❺焼きちくわ、揚げボール、つみれ、結び昆布を④に加え、さらに約5分煮る。
❻2等分に切った魚河岸あげを⑤に加え、さらに約10分煮る。
❼⑥にはんぺんを加え、汁をかけながら温め、ふっくらしたら火を止める。
(紀文食品のホームページから)
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