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中国語で「猪」とは、ブタのこと。かつて農村では、豚肉はごちそうだった。年越しや結婚式といった日に、一家で育てたブタをつぶして近所の人と味わった特別な料理を、殺猪菜と呼ぶようになったという。
殺猪菜と聞いて多くの人がイメージするのは、豚肉と酸っぱい白菜の漬物、豚の血を固めた「血腸」などを煮込んだ豚鍋だ。遼寧省瀋陽市にある1997年創業の人気店「凱莱特味村殺猪菜」で味わってみることにした。
来店客のほとんどが注文する豚鍋を、この店では「
脂身が多めの豚肉は弾力があり、濃厚なうまみが舌の上を満たす。白菜の漬物と一緒に口に放り込むと、漬物の酸味が豚肉の脂っぽさを抑えてくれる。酒も進むが、豚肉と白菜の滋味がしみこんだスープをすすっていると、やはり白飯が欲しくなる。
中華料理は地方ごとの違いが大きく、東北地方は濃厚な味付けや、盛りの多さが特徴とされる。この店の白肉酸菜鍋はたった36元(約730円)だが、大人3人でも食べきれないほどのボリュームだった。
劉さんは「東北人にとって殺猪菜は、ふるさとや人情を思い出す一品だ。看板メニューとして守り続けたい」と話す。コロナ禍で1人での食事が増えてしまったが、仲間で一つの鍋をつつく楽しさも再認識させてくれた。
豚鍋は、東北料理を扱う店のほとんどで提供している。呼び名が異なる場合もあり、作り方や具材も様々だ。血腸は見た目がややグロテスクで日本人には好みが分かれるが、食通の支局スタッフ(45)によると、「血の流れが良くなる」と好んで食べる中国人は多いという。
中国人は豚肉を愛する。紀元前から食材として使われるほど歴史が長く、食べ方は無数にあると言われる。殺猪菜だけでなく、日本人にもなじみが深い「ホイコーロウ(回鍋肉)」や、北宋の詩人・蘇東坡が考案したといわれる「トンポーロウ(東坡肉)」も、豚肉料理として有名だ。
データからも中国人の豚肉好きが分かる。中国国家統計局によると、2020年の国民1人当たりの豚肉の平均消費量は18.2キロ・グラムと、牛肉2.3キロ、羊肉1.2キロを大きく上回り、肉類全体の7割以上を占めた。21年の豚肉生産量は5296万トンと、世界全体の半分近くに達する見込みだ。
最近は、経済成長に伴う食生活の変化や健康志向の高まりで、牛肉や鶏肉の消費量が伸び、豚肉は微減する傾向にあるが、それでも人気は圧倒的だ。
そんな豚肉にも不遇な時代があった。「中華料理の文化史」(張競著、ちくま新書)によると、蘇東坡が活躍した宋代には卑しい食べ物とされ、「泥のように安く、身分の高い人は食べたがらなかった」という。
国内外の総支局長が、地域の自慢の味を紹介します。
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