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【GQ読書案内】7月に読みたい「料理の記憶を通して、人とまちを描く本」2冊 - GQ JAPAN

タイトル通りですが、今月は料理を通して異国の地を書いた、とてもおすすめの2冊を紹介します。

関口涼子『ベイルート961時間(とそれに伴う321皿の料理)』(講談社、税込1,760円)

料理が呼び覚ます戦争の記憶

レバノンの首都ベイルートと言われて、どんなイメージを抱くだろうか。内戦、戦争の絶えない場所として報道されることが多いけれど、いっぽう、アラブ諸国やヨーロッパでは、レバノンは憧れの街であり、近年では注目すべき食文化の中心地でもあるという。

本書はフランス在住の詩人・翻訳家・作家の関口涼子さんが、そのベイルートの国際作家協会に招聘を受け、現地で出会った人と料理を通して街を描いたルポルタージュ+エッセイだ。タイトルの数字が印象的だが、961時間は関口さんが滞在した約1カ月半を時間換算したもので、それは偶然にも、国際電話で使用するレバノンの国番号と一致した。また、滞在期間中に食した料理の数である321は、961のほぼ3分の1にあたる。滞在期間に対して、とても積極的にたくさんの料理に触れたことが伝わる。

戦争の傷跡が残る街で、著者は出会った人びとの料理にまつわる記憶をひとつひとつ聞いていく。彼らは、自分たちでは戦争の話はしない。しかし食べものの思い出を話しはじめると、必ずといっていいほど、その話の中には戦争に関する心を打つエピソードが現れてくるという。もし、直接戦争体験を尋ねられていたら、そのエピソードはきっと聞けなかっただろう。料理という、ある意味では普遍的なものを介したことによって、私的で語られにくいはずの当事者の記憶を呼び覚ますこととなったのだ。

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